間違えやすい要因


R. Réti
Kagans Neueste Schachnachrichten, 1921

どの ending 本にも出てくるような有名な問題。今まで何度かこの問題をやっているにもかかわず、正解手順が分かりませんでした(汗)

ということで、次回以降、必ず正解できるようになるために、この問題に対する考え方をまとめてみました。

黒先手では 1...Kb6 または 1...h4 で黒勝ちですから、白先手でドローにする方法を考えましょう。




ending (endgame) の問題では、いきなり駒を動かす前にまず、目標とプランを考えましょう。

目標 ドローにすること。

ドローにするためのプラン
白ポーンが昇格できればドローにできそう。
黒ポーンを取ることができればドローになる。

次に、プランを達成するためにはどうすれば良いか 考えます。
白ポーンを昇格させるためには、白キングが d7 に行く必要がある。
白キングが先手で動くと、黒ポーンを取るにはあと2手必要(2テンポ必要)。

思いつくこと があれば、それも考えますが、とりあえずここではなしとします。
あとは1手ごとの局面で、考えるべきこと を交えながら進めていきます。



初手は 1.Kg7 これはドローにできる可能性が1番高い手なので分かりやすいでしょう( 1.Kg8 と 1.Kh7 は不可 )。

黒の1手目は 1...Kb6 と 1...h4 が考えられますので、両方考えましょう。

1.Kg7 Kb6 2.Kf6 Kxc6? 3.Kg5 でドローにできます、よって

1.Kg7 Kb6 2.Kf6 h4

大事な場面、ここで白キングをどこへ動かせば良いか迷います。

正解は 3.Ke5 h3 4.Kd6 h2 5.c7 Kb7 ( 5...h1=Q 6.c8=Q でもドロー ) 6.Kd7 h1=Q 7.c8=Q+ この局面はドローになります。



または、3.Ke5 Kxc6 4.Kf4 で黒ポーンを取れるのでドローになります。




今度は 1.Kg7 h4 を考えてましょう、こちらの方が間違えやすいです。

1.Kg7 h4 2.Kf6 ここまでは大丈夫なはずです。


ここでまた、2...Kb6 と 2...h3 を考える必要がありますが、2...Kb6 の方は先ほどの 1.Kg7 Kb6 2.Kf6 h4 と同じ局面なので省略します。

1.Kg7 h4 2.Kf6 h3

ここが1番間違えやすい場面でしょう。白キングはすでに黒ポーンの昇格を止められないのに、心理的には 3.Ke5? としたくなります。上図を見ればそんなことはないかもしれませんが、頭の中でこの局面をイメージして考えた場合は、間違えやすくなります。

3.Ke6 が正解で、以下
3...h2 4.c7 Kb7 5.Kd7 h1=Q 6.c8=Q+
3...Kb6 4.Kd7 h2 5.c7 h1=Q 6.c8=Q
でドローになります。

何故 3.e5? が悪いかというと、キングが d7 へ行くのに、3.e6 よりも1手遅れるからです。


最後にこの問題が間違えやすい要因として

1.Kg7 h4 2.Kf6 の局面から

2...Kb6 では 3.Ke5 としないと白が負けるのに対して
2...h3  では 3.Ke5 としては白が負ける

という点が挙げられます。

次回こそは必ず正解するためには
黒ポーンの昇格を止められなくなったら、白キングは最短ルートで白ポーンのサポートへ回らなければならない。

・・・忘れそう(T▽T)


追記(10月22日)
解答手順に2ヵ所 間違いがあったため訂正いたしました。
失礼いたしました。


コメント

Takuya さんの投稿…
 エンドゲームは、駒を動かす可能性が非常に多いためどのように動かさなければならないかわからないことが多いです。
 今回の記事の内容にしても、説明していただくとわかるような気がしますが、実際に出会えば確実にできません^^;
 現在は、Pandolfiniの本を読んでいますが、まだまだエンドゲームにもちこまれて負けてしまうことが多いです。Pandolfiniは何周か読んでみて、しっかりと理解していきたいです。
hitsujyun さんの投稿…
オープニングでは多少の悪手はあとで挽回できることもありますが、エンドゲームでは1手のミスで結果が変わってしまいます。

始めは難しく感じるかも知れませんが、間違いに学べば覚えやすくなりますし、基本的なエンドゲームの状況であればはタクティクスよりもパターンとして覚えやすいと思います。

タクティクスはパターンを見つけ出す、のに対し、エンドゲームはパターンを知っているかどうかです。

Pandolfini 本の問題をほとんど覚えてしまうだけでもエンドゲームの基礎力が上がり、ゲームにも成果が出てくることでしょう^^ 本に載ってない手順でも「このように駒を動かしたらどうなるのだろう?」と思い、不明な場合は、Fritz などのチェスソフトで確認することが、上達につながえります。
私はPandolfini を2回読んで Chess Endings: Essential Knowledge に進みました。

その後、Rook Ending への苦手意識から starting out:rook endgames を読んだら Rook への苦手意識が Rook Ending は面白いに変わりました。

Just the Facts! の本も良書でしたが、扱われている局面が限られているため、途中で Fundamental Chess Endings へ移りました。FCE は難しい問題も多いですが、勉強になるため、Fritz を使いながら地道に読んでいこうと思ってます。

基本的なエンドゲーム問題も大事なので、現在は 101 Chess Endgame Tips の本を読み始めています。

私は持っていませんが、100 Endgames You Must Know は評判がいいです。
Takuya さんの投稿…
お返事ありがとうございます。
今のところ、ゲーム後の分析を見ると、エンドゲームにおいて悪手を打ってしまって、一気に逆転されるということが非常に多いです。 しかし、

「始めは難しく感じるかも知れませんが、間違いに学べば覚えやすくなりますし、基本的なエンドゲームの状況であればはタクティクスよりもパターンとして覚えやすいと思います。

タクティクスはパターンを見つけ出す、のに対し、エンドゲームはパターンを知っているかどうかです。」

と聞いて、若干安心しました^^;。 やはり、まだまだエンドゲームのパターンをほぼ全く知らないので、覚えていきたいと思います。

まだまだ先ですが、Pandolfiniを数周した後には、Averbakhの本に進んでみたいと思います。 Starting out : rook endgames も興味深いです。ちょうど、先日、ルークのエンドゲームで勝てるところを逃してしまったところです^^;。
hitsujyun さんの投稿…
Chess Endings: Essential Knowledge の本は1回しか読んでませんが、ためになり読んで良かったです。ただ、その本の最後に 5 Practical Endings の章があり、その章の始めに出てくるポーンエンディングは勉強になるのですが、その後に出てくるものは、その問題だけやっても得るものが無いように感じました。

というのも、基本的な問題から段階的に、状況別に覚えていかないと、パターンとして覚えづらいからです。

というわけで、新たなエンドゲームの本を探していたところ Fundamental Chess Endings に行き当たりました。この本は、長い手順や、変化が多い問題が多いので、それらを全て覚えるのは無理ですが、この状況のときはこのようにする、のようなことを学べると思います。問題が状況別に良く整理されているのと、構成的に見やすいです。

Pandolfini 本の中にも重要な Rook Ending の問題が含まれていますが、Rook Ending については、Rook Ending に特化した本で集中的に学んだ方がよいと、個人的に思います^^
Takuya さんの投稿…
お返事ありがとうございます。

Averbakh本については、内容がどんな感じか気になっていたので参考になります。Fundamental Chess Endingsについては、米国Amazonでも評価が高いですね。対象者が中級以上のプレイヤーのようなので、まだ手は出せませんが、いずれはすすんで読んでみたいものです。