お気に入りの言葉 其の十九

「チェスには、静かな手と強い手があります。強い手というのは・・・」
「ふむふむ、ふむ、そうでしたか」と紳士はうなずいた。
「強い手というのは」とルージンは大声で力説した。
「すぐに間違いなく効果があるような手です。たとえば両王手で、大きな駒を取れるとか、あるいはそうですね、ポーンがクイーンに成るとか。などなど。などなどです。それで静かな手というのは・・・」
「なるほど、なるほど」と紳士が言った。「競技会は何日くらい続くんですかな?」
「静かな手には、策略や、落とし穴や、複雑化が含まれています」とルージンは、相手を喜ばせようとしながらも、事の本質に迫った。


「ディフェンス」より

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